社会情勢

新型コロナウイルス(COVID-19)が高い気温や湿度で感染拡大が抑制されるかをデータから検証

新型コロナウイルス(COVID-19)によって,最初に感染拡大が最も深刻な中国の武漢は,患者数の増大や封鎖による交通機関の麻痺,食料不足など,パニック状態となりました。

現在は,中国の感染拡大と混乱はひと段落したものの,ヨーロッパ,アメリカそして日本など,世界中で感染者数の増大が生じており,日本では2020年4月7日に「非常事態宣言」が発令されました。

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は,どんな状況で抑制されるのか,いつ頃収束するのかが気になっている人も多いと思います。

この記事では,新型コロナウイルス(COVID-19)が,気温や湿度(降水量)の変化によって感染拡大が抑制されているかをデータから検証します。

 

1. 新型コロナウイルス(COVID-19)の概要

新型のコロナウイルス(COVID-19)は,2019年12月に中華人民共和国 湖北省 武漢市で人への感染が確認されたもので,37.5度以上の発熱やせきを伴う肺炎症状などを引き起こします。

新型コロナウイルスの致死率は,2~3%程度とそれほど大きくなく,死者の大半は高齢者もしくは持病との合併症です。しかし,感染の拡大速度が速いうえ,ワクチンや治療薬がないことからパニック状態になっています。

感染経路は,接触感染と飛沫感染であり,加えてエアロゾル感染の可能性もあると報じられています。飛沫による感染抑制には,マスクの装着が効果的であり,日本では多くの人が外出時に装着するとともに,品薄状態が続いています。(マスクの品薄状態が続いているため,日本政府によって,2020年3月15日以降は,購入価格を超えるマスクの転売が法律で禁止されました)

 ※接触感染:直接触れたり,感染者の唾液や体液に触ることによる感染
  飛沫感染:咳やくしゃみで飛び散ったしぶきによる感染
  エアロゾロ感染:空気中を漂う微細な粒子(飛沫核)を吸い込むことにより感染

また,経済的な影響としては,生産活動の停滞,それに伴う工業部品の輸入遅延による日本国内製造業への影響,海外渡航の制限,インバウンド関係の会社や飲食店の疲弊・倒産などなどが生じており,今後の感染拡大が懸念されています。

 

以下は,世界および日本での時系列の主な出来事です。

【2019年12月8日】
武漢で最初の肺炎患者が報告

【2019年12月31日】
原因不明の肺炎であることを,中国当局からWHO(世界保健機関)に報告

【2020年1月7日】
中国当局が新型コロナウイルスを検出。その後中国で初の死者を確認するとともに,人から人へ感染することが明らかになる

【1月23日】
中国の武漢を閉鎖

【2020年1月31日】
WHO(世界保健機関)が緊急事態宣言(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)を発出

【2020年2月11日】
WHOが新型コロナウイルスの病名を「COVID-19」と命名

【2020年2月27日】
安倍首相が全国の休校を要請

【2020年3月12日】
WHOが新型コロナウイルス感染症を「パンデミック(世界的大流行)とみなせる」と表明

【2020年3月13日】
WHOのテドロス事務局長が、欧州が新型コロナの大流行の中心地という認識を示した。

【2020年3月24日】
2020年7~8月に開催予定の東京オリンピックの延期が決定
WHOが定例記者会見で,流行の中心はいまだにヨーロッパだが、アメリカでの感染拡大が急激に加速しており、今後、流行の中心になる可能性があると発信

【2020年4月3日】
世界中の感染者数が100万人を上回る

【2020年4月7日】
日本の7都府県で緊急事態宣言が発令(東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,大阪府,兵庫県,福岡県)

【2020年4月8日】
中国武漢の閉鎖が解除

【2020年4月9日】
世界中の感染者数が150万人を上回る

 

※時系列の経緯は以下の記事などをもとに再整理しています。
 https://www.huffingtonpost.jp/entry/covid-19-timeline_jp_5e46015ac5b64433c613ba12
 http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2020-04/07/content_75902956.htm
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894569620

 

2. 他のコロナウイルス(SARS,MERS,風邪症候群)との比較

コロナウイルスは,新型コロナウイルス(COVID-19)だけでなく,かぜ(風邪症候群,インフルエンザもその一種で4種類ある),SARS(サーズ,重症急性呼吸器症候群),MERS(マーズ,中東呼吸器症候群)があります。

これらの既存のコロナウイルスと比較して,新型コロナウイルス(COVID-19)はどのような特性があるかを把握するために,比較表を以下に作成しました。

新型コロナウイルスは,サーズ(SARS)やマーズ(MERS)と比較して,低い致死率となっていますが,感染者数が非常に多い特徴がわかります。

感染経路は咳などの飛沫や接触感染が主とされていますが,エアロゾル感染の可能性も指摘されており,横浜港近くに停泊していたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」では,隔離していたはずの船内で多くの感染者が出たことからも,感染力の強さには警戒が必要です。
この記事のように,クルーズ船内での隔離の仕方が良くなかったとの指摘もありますが,感染力の強さはよくわかります。)

  かぜ
(229E,OC43,NL63,HKU1)
SARS
(重症急性呼吸器症候群)
MERS
(中東呼吸器症候群)
新型コロナウイルス
(COVID-19)
発生時期 毎年 2002年11月~2003/7/1 2012年9月~2015/12/1
(中東では2015年12月にWHOの終息宣言が出た現在でも感染が発生)
2019年12月
収束までの期間 収束しておらず毎年発生 8カ月
(2002.11~WHO終息宣言2003.7)
7カ月
(韓国でMERS確定とされた2015.5~WHO終息宣言2015.12)
??
(中国では2020年3月7日に1日あたりの感染者数が100人未満になり,収束に向かっているように見える)
主な流行地域 世界中 中国広東省 サウジアラビアなどのアラビア半島,韓国 中国(武漢が主),イタリア,イラン,アメリカ,韓国,日本など世界中
死亡者/感染者 感染者はかぜの原因の10~15%程度 774人/8,098人 862人/2,506人
(2019年末)
約171万人/約11万人
(2020年4月12日時点)
致死率 極めてまれ 9.40% 34.40% 2~3%
感染者の年齢 多くは5歳以下 平均41歳
(0~100歳)
平均51歳
(1~109歳)
幅広い年齢
症状 軽症 重症 重症 重症
(鼻風邪,上気道炎) (高熱,肺炎,下痢) (高熱,肺炎,腎炎,下痢) (高熱,肺炎,下痢)
重症者の特徴 通常は重症化しない 糖尿病,心臓病,高齢者 糖尿病,心臓病,高齢者 糖尿病,心臓病,高齢者
感染経路 咳などの飛沫、接触 咳などの飛沫、接触 咳などの飛沫、接触 咳などの飛沫、接触,エアロゾル感染の可能性も
伝播の特徴 人から人への感染 人から人への感染 不明(発生が散発的) 人から人への感染
潜伏期間 数日(不明) 1-10日 2-15日 1~14日
ヒト・ヒト感染 1人から多数 1人から2~5人 1人から1人未満 1人から1~3人程度?

出典:以下の資料等をもとに整理
・松山州徳(2014):中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス感染症,モダンメディア 60巻4号2014[話題の感染症]137(http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM1404_01.pdf)
・忽那賢志(https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200131-00161096/)

 

3. 新型コロナウイルスの感染が抑制される条件に関する報告

新型コロナウイルスが高温や高湿度に弱いかどうかについて,要人,研究者,ジャーナリスト等の発言を探しました。以下に主なものを示します。

 

【アメリカのトランプ大統領】
2020年2月10日に,「一般的に暑さはこの種のウイルスを死滅させる」と発言し,2020年4月に新型コロナウイルスの感染拡大が収束するとの見通しを示しています。
 https://www.afpbb.com/articles/-/3267731

 

【アメリカのCOVID-19媒介物報告書】
2020年2月16~24日発行のアメリカのアレルギー感染症研究所・国立衛生研究所・国防総省先端技術開発庁・全米科学財団による報告書「COVID-19媒介物報告書」によると,「湿度50%,気温22度にすれば、ウイルスの活動が収まる」ことが報告されています。
 https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf

 

【欧州疾病予防管理センター(ECDC)】
2020年3月25日に,「新型コロナウイルス感染拡大が夏に終息する公算は小さく,シンガポールのような高温多湿の熱帯地方でも、ウイルスの活動が弱まらない」という見通しを発表しました。
 https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/03/post-92871.php

 

【中国の北京航空航天大学と清華大学の研究グループ】
中国100都市でCOVID-19の状況と気温・湿度の相関関係を分析した結果,温度が1℃、相対湿度が1%上昇するごとに感染が減少することを明らかにしました。
 ※Jingyuan Wang. et.al:High Temperature and High Humidity Reduce the Transmission of COVID-19,https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3551767(2020年3月9日)

 

これらをまとめると,高気温・高湿度で新型コロナウイルスの感染拡大が抑制されるという報告がある一方で,熱帯地域でもウイルスの活動は弱まらないという報告もあり,はっきりとわかりません。

 

私の考えとしては,高温・高湿度によって「ウイルスが死滅すること」と「ウイルスの死滅は生じにくいけども感染力が弱まる(基本再生産数の低下)」という2つの要素があり,それらが入り混じって伝わっているため混乱を招いていると感じます。

また,各研究は,現地データ(各地域の感染者数や気候条件の相関関係)と実験データ(実験室で試験)が混じっており,それぞれ同じ土俵で比較しにくいため,結果の相違が出ている可能性があると考えます。

 

4. 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者数と気温・降水量の関係

ここでは,地域別に新型コロナウイルスの感染者数と気温・湿度の関係を分析ため,時系列の感染者数と気温・降水量を整理しました。湿度のデータは入手できなかったので,代わりに降水量を用いています。

対象地域は,これらの相関関係を読み取りやすくするため,感染者数が多い地域として,中国(武漢),イラン,イタリア,韓国の4つとしました。

それでは,それぞれ見ていきましょう。

4.1 中国・武漢のケース

「中国湖北省の新型コロナウイルスの感染者数」と「中国湖北省武漢の気温・降水量」の関係を下図に整理しました。

中国全体だと範囲が広すぎて,気温・降水量を1地域に代表できないと考えたため,湖北省を対象に絞りました。

中国の湖北省の武漢は,新型コロナウイルスが初めて見つかった地域であり,中国内で最も感染者数が多かった地域です。(中国の省別の感染者数は,湖北省だけで約8割以上)

新型コロナウイルスの潜伏期間が1~14日(さらに長いとの説もあり)といわれていますので,感染者の減少が見られた1~14日前程度に,気温・降水量にどのような変化が見られたかを確認したところ,以下のことが把握できました。

 

  • 2/6頃から感染者数が減少傾向にあります。また,2/19頃にも減少が見られます。
  • 感染者数が減少した上記の2時期について,その1週間前には,最高気温が15℃強まで高くなった日があり,高い気温と感染者数の減少に関係が見られます。(下図の赤矢印
  • 同じく,感染者数が減少した上記の2時期について,その2週間前には,ある程度まとまった降雨がみられ,降水量(≒湿度)と感染者数の減少に関係が見られます。(下図のピンク矢印
  • 現時点のデータでは,最高気温と降水量のどちらが,感染拡大の抑制に寄与しているかが不明確ですが,どちらもしくは両方が影響している可能性がありそうです。
新型コロナウイルスの感染者数(湖北省)と気温・降水量(武漢)の関係
【新型コロナウイルスの感染者数(湖北省)と気温・降水量(武漢)の関係】

※「コロナウイルス感染 中国マップ」(日本経済新聞)と「WORLD WEATHER ONLINE」をもとに,このHPの管理人が作成
※この図は転載自由ですが,本HPのリンクをお願いします

 

新型コロナウイルスの感染が初めて確認された武漢では,2020年3月12日以降は新規感染者数が10人未満となり,収束に近付いていると考えてよいでしょう。

また,武漢の気温と湿度は,下図のようにだんだん高くなっていきますので,高気温・高湿度が新型コロナウイルスの感染抑制に寄与しているのであれば,気候から見ても,より収束しやすい環境になると考えられます。

アメリカのトランプ大統領は,さきほどの2020年2月12日時点のニュースで,新型コロナウイルスは4月に収束するという見通しを立てており,中国に限ってはそれなりに当たっていることになりますが,現在はアメリカや世界中で感染が拡大している状況で,トランプ自身もアメリカでここまで感染が拡大するとは考えていなかったのではないかと推測します。

武漢の月別の気候
【武漢の月別の気候】

 

4.2 イラン・イタリア・韓国のケース

次に,中国以外で新型コロナウイルスの感染者数が特に多い,イラン,イタリア,韓国の3地域について,さきほどと同様に「新型コロナウイルスの感染者数」と「その地域の気温・降水量」の時系列推移を見ていきます。

 

以下に,この3地域のデータを示します。感染者数は地域別に分けられなかったことから国全体とし,気温・降水量は感染者数が多い地域としました。これより,以下のことがわかりました。

  • イランは2020年3月31日に,イタリアは2020年3月22日に感染者数のピークが見られ,以降は感染者数の低下がみられます。ピーク後の感染者数低下が見られた1~2週間前には,最高気温が20度近くの日とまとまった降水量(イランでは80mm,イタリアは50mm程度と多い)が観測されています。
  • 韓国は2020年2月29日に感染者数のピークが見られ,以降は感染者数の低下がみられます。ピーク後の感染者数低下がみられた1~2週間前には,イラン・イタリアと同様にまとまった降水量が観測されています。一方,最高気温20度以上の日はこの時期はありません。
  • 上記のことから,3か国に共通しているのは,まとまった降水量が観測された後,感染者数の低下がみられるということです。これは,雨や湿度により新型コロナウイルスが死滅しているのか,死滅はしていないが感染力が落ちているのか,雨によって人の活動が不活発になっており感染が抑制されているのかは判断できませんが,何かしら降水量と感染者数の関係がありそうだといえそうです。
  • 一方,高い気温で感染が抑制されるかは,はっきりとわかりませんでした。フィリピン,マレーシアでも。2020年4月13日時点でそれぞれ3000人以上の感染者が見られることから,感染拡大が抑制される可能性はあっても,ウイルスが死滅するには至らないと考えられます。

 

新型コロナウイルスの感染者数(イラン)と気温・降水量(イランのクム)の関係
【新型コロナウイルスの感染者数(イラン)と気温・降水量(イランのクム)の関係】

新型コロナウイルスの感染者数(イタリア)と気温・降水量(イタリアのミラノ)の関係
【新型コロナウイルスの感染者数(イタリア)と気温・降水量(イタリアのミラノ)の関係】

新型コロナウイルスの感染者数(韓国)と気温・降水量(韓国の大邱)の関係
【新型コロナウイルスの感染者数(韓国)と気温・降水量(韓国の大邱)の関係】

 

5.さいごに

現地の気象データと感染者の関係を見る限り,特に雨が感染低下に影響している可能性がありました。

また,中国の北京航空航天大学と清華大学の研究グループでも,温度が1℃、相対湿度が1%上昇するごとに感染が減少することを示しました

そのため,日本では梅雨の時期が終わるまでには,感染者の収束に近づくと私は考えています。

今後もデータを更新して,新型コロナウイルスと気温・降水量との関係を分析します。

また,本ブログの別記事「新型コロナウイルス(COVID-19)の収束時期を予測」で,新型コロナウイルスの収束時期を予測していますので,ご興味があれば,ご覧ください。

 

※今後もこの記事を更新し,状況をモニタリングしていきますので,気にある方はブラウザの「お気に入り」に登録をお願いします。

 

作成:2020年2月24日

最終更新:2020年5月17日